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  • 執筆者の写真便利堂 国宝事典係

カラー写真を代表する壁画

更新日:2018年10月5日

 皆様こんにちは。この度は『国宝事典 第四版』の刊行をお待たせしており、誠に申し訳ございません。その進捗具合とトピックをお伝えする『国宝事典ブログ』を更新いたしました。


 まずは作業の進捗のご報告です。編集作業も大詰めを迎え、現在校了作業に鋭意努力しております。残すところ1ジャンルについて文化庁様からの校正戻り待ちとなっており、これがすべて揃い校了となれば、印刷製本~完成・お届けとなります。


 もう1点ご報告ですが、既報の通り本四版は、今年春に国宝新指定の答申がなされた文化財も収録した最新版です。しかしながら、この答申に対する正式な発表である官報の公示が、諸事情により遅れている模様です。今月下旬には公示される見込みとの情報も得ておりますが、このあたりも刊行に影響するところでございます。長らくお待たせしており、またご心配をお掛けしている状況であることを心よりお詫び申し上げます。刊行まであと一歩のところまで来ておりますので、何卒いましばらくお時間頂戴いたしますようお願い申し上げます。


 さて、第4回目の今回は、国宝事典の掲載内容と高松塚古墳についてご紹介いたします。



巻頭を飾る“女子群像”


 国宝事典では、作品の種別(ジャンル)として、絵画、彫刻、工芸品、書跡・典籍、古文書、考古資料、歴史資料、建造物の順とし、工芸品についてはさらに金工、漆工、陶磁、染織、甲冑、刀剣、その他(雑)に分類、掲載しています。


 したがって『国宝事典 第四版』は絵画の作品からはじまるのですが、今回の第四版では、その一番始めに掲載される国宝が、奈良県高市郡明日香村にある高松塚古墳の「高松塚古墳壁画」です。ちなみに、同壁画の国宝指定は昭和49年でしたので、昭和51年(1976)に刊行した『国宝事典 第三版』では、初版からの追加指定分ということで、章末に増補というかたちで掲載されていました。今回はじめて巻頭をかざるということになります。



第三版

第四版

 また、第三版と今回の第四版は、カラー図版で掲載されているという点で異なります。とくに高松塚古墳壁画のうち西壁の女子群像は色鮮やかで、やはりモノクロよりもカラー図版のほうがより美しく見えます。また、壁画は発掘後の雨水やカビによる退職・変色、さらには損傷を受けた過去があり、現在は修復されているものの、発掘当時の姿を見ることができるものは写真しかありません。今回刊行の第四版では、発見直後に撮影された写真を掲載しています。


 そんな高松塚古墳壁画ですが、皆さんがよく見る発掘直後の壁画の写真を、便利堂が撮影していたのはご存知でしょうか。



写真にのこる生々しさ

 昭和47年(1972)3月21日に高松塚古墳の石室が検出され、壁画が発見されると、当時発掘に関わっていた関西大学の網干先生から便利堂へ連絡があり、翌日22日と24日の2日間にわたり、東西南北天井のすべての撮影がおこなわれました。


 撮影を任された便利堂の写真技師は、のちの手記に『身じたくをして、肩幅より少し広い程度の古墳の盗掘口から、四ツ這いになって頭からそっと入り外にいる助手に発電機を始動させ、撮影用の150ワットのランプを照らしてみて驚きました。外から見た時には見えなかった壁面に、人物像が描かれているのがはっきりと私の目に入り、あまりにも美しく、あざやかな影像に、しばらく息をのむ思いでだまって見ているだけでした。ここに描かれている絵も、初めてこのような明るい光に照し出されたことでしょう。まるで今描かれたような生々しさでした』と記していて、発掘された直後の壁画の美しさや生々しさが伝わってきます。



当時の写真工房の作業日誌

高松塚古墳、撮影と現像をした記録

 その後、撮影されたカラー写真が、同月27日の新聞紙上で壁画の発見の見出しとともに大々的に発表され、世の中の人々が知ることとなったのです。


 そして便利堂では、昨年、壁画の発見・撮影45周年と便利堂130年を記念して、高松塚古墳壁画全面(東・西・北・天井璧)を原寸大カラーコロタイプで再現し、また京都文化博物館にて、法隆寺金堂壁画をはじめとする便利堂がこれまで携わってきた数々のコロタイプ複製とともに展示をおこないました。


複製壁画展示の様子

西壁壁画の展示

古墳内での撮影を再現した模型

 もちろん発掘後、壁画がどのような道をたどっていくのか撮影をした技師も、また発掘に携わった人々も想像できなかったはずですが、カラーフィルムで撮影したことにより、結果的に発見直後の本来の壁画の色彩を今でも写真を通して見ることができます。そして、今回の国宝事典にもカラーで掲載することができました。

 国宝事典第四版の魅力である図版のカラー掲載。カラー図版だからこそ伝わる美しさを、ぜひ感じてください。

 ※次号の内容:第四版のもう一つの魅力、40ページを超える別掲図版をご紹介します。ここだけでも見ごたえがあります! 次回もぜひご覧ください。


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