ご予約いただきました国宝事典の進捗具合とトピックをお伝えする『国宝事典ブログ』、まずは進捗状況についてお知らせいたします。
国宝事典のお届けが遅くなっており、ご迷惑ご心配をお掛けし申し訳ございません。前号でもお知らせいたしましたように編集作業も大詰めを迎えております。予約開始時点では、総頁約600頁を想定しておりましたが、最終的には約150頁増の750頁以上のボリュームとなっております。なんと25%増量ですが、もちろん価格は据置です。印刷・製本作業にもかなり時間を要しますので、すでに製本の表紙製作作業には取り掛かっており、来週より本文等の印刷も順次作業に進む予定です。
ブログ前号で既報のとおりの通り、1ジャンルの文化庁様からの校正戻りと今年度の新指定の官報告示が最後のペンディング事項となっておりますが、これがクリアでき次第すみやかに皆様にお届けできるよう、それ以外の部分については上記の通り進捗に鋭意努力しているところでございます。お届まで今しばらくお待ちいただきますよう、重ねてお願い申し上げます。
さて、その頁数大増量の目玉のひとつが「別掲図版」です。News Letter 5回目の今回は、第四版で初めて実現したこのセクションについて詳しくお伝えしたいと思います。
これだけでも楽しめる「別掲図版」
すべての国宝を解説した国宝事典では、解説文も充実した内容であるために、掲載する写真は基本的に1つの指定品に対して1点の写真しか掲載できません。しかし、例えば仏像や法具などは複数合わせてひとつの国宝として指定されているものが多く、すべてそろった状態で見ることによって、改めてその文化財の魅力を感じることができます。
そのため、今回の国宝事典第四版では、「別掲図版」として本文で掲載しきれなかった図版を巻末に多く掲載しています。その量なんと40頁!前回のニュースレターでご紹介した高松塚古墳壁画も、本文では西壁の女子群像のみですが、別掲図版では西壁をはじめ、東壁や北壁、そして天井と、すべての壁画を載せています。
このようにセットで指定されている物は可能な限り掲載をしていますが、より面白くご覧いただく方法としておすすめなのが、「同じテーマの国宝を見比べる」というものです。
コワモテ4人衆を比べると…?
例えば、彫刻の分野では、10件の四天王立像が国宝に指定されています。四天王とは、そもそもインド神話に登場する雷神インドラ(帝釈天)の配下にいた者たちが、仏教の守護神として取り入れられたもので、その後大陸で仏教が広がり中国に渡ると、甲冑を着て武器などを持ち邪気を踏みつける姿になり、日本へ伝来しました。そのため日本の四天王像の多くは、中国風の甲冑を身に着けています。
飛鳥時代には、仏教を発端とした蘇我馬子と物部守屋の政権争いの際に、聖徳太子が馬子の戦勝を四天王に祈願したという伝説が『日本書紀』にも記されており、戦いの結果、馬子が勝利したことを感謝して、太子が現在の大阪市天王寺地区にある四天王寺を建立したといわれるなど、日本でも古くから信仰の対象となっています。
四天王はその名の通り4躰が1セットでそれぞれの持物(仏像が手に持っている物のこと)や守護する方角が決まっています。東を護る持国天は宝刀を、南を護る増長天は戟(げき)あるいは三叉戟を、西を護る広目天は巻物と筆を、北を護る多聞天は宝塔を持っています。
しかし、その立ち姿や表情は制作者である彫師によって異なり、それぞれの違いを見比べるのも楽しさの1つでしょう。今回の国宝事典でも様々な国宝の四天王立像が並べて掲載されていますので、ぜひコワモテ4人衆を比べてみてください!
誰かに似ている千体仏
しかし別掲図版とはいえ、四天王立像ならまだしも、今年度新しく国宝に指定される予定である妙法院三十三間堂の千体の観音立像は、今回さすがに千体全てを掲載することはできませんでした。
三十三間堂をお参りすると亡くなった人や知人に会えるとまで言われるこの千体仏は、その観音像の多さだけでなく、彫像当時、奈良や京都にいた一流の仏師たちが流派を超えて、総動員されて製作したという大変魅力のある観音像です。
その観音さま千体の新国宝指定を記念した図録が、この度妙法院さまより出版されました(便利堂制作です!)。千体仏をはじめ、代表的な二十八部衆や風神雷神など全てを写真図版で掲載した図録です。妙法院三十三間堂の堂内にてご購入が可能ですので、ご参拝の際にはぜひお手に取ってご覧ください。
もちろん国宝事典でも、すでに国宝指定されている千手観音坐像をはじめ、二十八部衆の全てや三十三間堂自体の図版を掲載しております。今回ご紹介できなかった様々な写真が巻末に載っていますので、国宝事典片手に国宝巡りを…とは、本のボリューム的に言えませんが、ぜひ様々な方法で国宝事典をお楽しみください!
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